Shel Silverstein "The Giving Tree" (2)

The Giving Tree (Rise and Shine)

The Giving Tree (Rise and Shine)

昨日のつづき。
これを貸してくれた友人は、一方的な関係はうまくいかないという一種の教訓話として受け取ったらしい。でも、さすがにその読みかたは貧しいんじゃないかと思う。その友人がこれを貸した別の人 (女性) は、母性の話と読んだらしいけど、それならわかる (母性讃歌とかいうような変な読みかたをしてないと仮定しての話だけど)。
ふたりのちがいは、だからどうしろというような意味を読み取ったかどうかってところ。"The Giving Tree" というのは、身もふたもないいいかたをすれば、与えつづけた者があんまり報われなかったという話なのだけど、Silverstein はそこでなにも主張していない。そして、それは消極的なものではなく積極的なものだと、つまり、意味は意志して排除されたのだと感じられる。世の中にはこのような関係があり、そしてこのような結末がある、そのありのままをただ描く、そのことに集中された作品なのだと感じられる。
これを母性の話だと読むのはありだと思うけど、別にそう限定する必要もないだろうと思う。たとえば、こういう恋愛関係もあるだろうし、友人関係もあるだろう。
Silverstein が意味を与えなかったがゆえに、この作品はたぶん "世界" とか "人生" とかいうようなものを映し出すものになってる。それはなんだか、ひどく残酷で、ひどく哀しくて、ひどくつらいものだけど、でも奇妙に力強くて、読んだらちょっと元気が出るような気さえするのだ。
こんなふうに考えてると、"The Giving Tree" が好きになってきた。最初はそんなに良いと思わなかったのにねぇ。